前へ次へ   更新
77/125

第6章 第11話 You should work◇

 国民の皆様こんにちはお世話になっています。


 もうこんにちはかこんばんはかよく分かんないけど赤井です。

 さて、グランディア剣術競技、最終日の日程は無事に進んでいます。結局ずっと舞台下で見てるんだけど、もう観覧席に戻らなくてもいいや何かあったらすぐ舞台の上にスライディングできるし。

 気分は両選手のセコンドだ、試合中は気配消してますけど。


 バルバラとコハクの試合を終え、遂に決勝にまで勝ち進んだバルバラにねぎらいの言葉を交わしてたら、早くも次の試合の選手のコールが。


【グランダ国 重装歩兵部隊 中隊長 ジェロム x モンジャ集落 無職 イヤン】

 

 まあおとなしく真面目な選手コールだよ。もっと荒ぶってもいいよ、なんたって年に一回の祭りだよ!? 格闘技の試合っぽくリングアナウンサーは巻き舌でこう、もっと「グルァンドゥアァァァァァだいひょおお―――! ジェウェエロヲオウォ――ムゥ!」くらいガッツがあってもいいと思うんだ。来年はそういうパンチのある演出も提案してみたいよね! 

 ……何でもないよ、言ってみただけじゃない。

 却下されるのは分かってるよ、興行じゃないんだし。


 ん? てかイヤンさん勝ち上がってきてたの?


 救護班の腕章をつけたメグが、舞台下でカコンさん、クワトロさん、バルバラ、コハクそして私という順で一列に行儀よく正座している私らのところに小走りで寄ってきた。


「かみさまー、私見てますから上にあがっても大丈夫ですよー」


 メグ一人で見てても、見てるだけになっちゃうよ。


『いえいえ、私が怪我人が出ないか見てますからメグさんこそ休んでてください』

「そうですか」

『そうだ、メグさんも隣にどうぞ』


 私が出しゃばるとメグの仕事奪っちゃうか、そりゃいけない。


『えーと……』


 真剣な顔で私の隣に体育座りをしたので、カコンさん、クワトロさん、バルバラ、コハク、私、メグの順に横一列の並びになった。何だろうこの微妙な感じ。私は列から少し顔を覗かせて


『ところで皆さん、控室にいてもいいんですよー』


 とか促したけど、見学者は減らない。勝った二人は特に決勝の相手を見たいんだろう。残りの二人は何となくか、帰るタイミングを失った様子。


 まあとにかく、次はグランダの兵士さんとモンジャが誇る最強ニート、自宅警備員との対戦カードだよ。

 そういやグランダの軍団は、最近再編成を行ったみたい。徴兵軍だった弓兵を減員して、重装歩兵中心で規模を縮小したんだよ。なので今、グランダ軍は2つの中隊、6の小隊がある。とはいっても、軍団は非正規軍も含めて300強ぐらいなんだ、全体的にこぢんまりしてるよね。でもグランダの人口が1900人ぐらいだから、グランダの成人男性の三人に一人が兵士ってことになる。そう考えるとやっぱり軍事国家だ。なのに一人しか勝ち上がってきてないのは、予選で兵士さん同士が当たって潰し合ったから、かなぁ。あとはグランディア会場内の警備もやってくれてて、出られなかった人も多い。


 そのジェロムさんは、グランダ解放のとき私に先陣切って斬りかかってきた人だけど、皆さん覚えてる? 私は忘れませんよ、ある意味根性と勇気のある人だからね。神炎の壁に突撃してすぐ水瓶にUターンダイヴしてた人だよ、後で体裁悪かったであろうあの人だ。皆さんもう忘れたかー。

 あの人実はベスト4に勝ち上がってくるぐらい強かったんだね、知らなかったよ。


 迎え撃つは、異彩を放つモンジャのニート、イヤンさん。

 彼はニートのA.I.だよ、A.I.のニートとも言うか。

 正確に言えば彼はただのニートじゃないんだ、アグレッシブなニートなんだ。奥さんと子供に家を出て行かれてからというもの、傷心なのか何か悟りを開いたのか、農業をやめて働かずに大自然の中で色んな修行してる。草原で野宿したり、たまに対戦相手を探してモンジャを彷徨ってる。ある意味武術家か。修行の成果を試すべく、狩人とか、ロイやカコンさんら目ぼしい人たちに何度も試合を申し込んでたりするけど、忙しいので今度にして、とか適当に断られてたのは見た。不憫だ。


 まあ仕方ない。モンジャにニートは彼一人、皆はというと忙しい。

 てなわけで、強い相手を求めて最近、武者修行の旅に出たのは私も知ってた。どこを放浪してたのかは知らなかった。多分、この人は第一区画が解放されたときにグランダと戦ってくれる予定のA.I.だったんじゃないかなーと思ってる。時代の巡り合わせが悪くてニートになってるけど……。


 二人は台の上にずらーっと武器が並んでて、それを選んでる。

 色々と吟味の末、片手剣を選んだジェロムさん、重装歩兵の装備するグランダでは一般的な武器だ。

 イヤンさんは棒を持った。うん、それだと思ったよ、いつもそれ持ってるし物干し竿にもしてるし。モンジャには剣がなかったから剣とかはあまり使わない。ロイをはじめ、槍だのモリだの、長得物大好き集団だ。そしてやっぱりそれを物干し竿にするあたりは、モンジャ民の習性らしい。


 武器の解説をしたいところだけど、私全然武器とか詳しくないから無理。私がヤクシャさんとトレスポで3か月間やってたことといえば、全部エクストリームスポーツよ? 球技ならともかく剣術の実況やら解説とか無理。おまけにイヤンさんのオリジナル武術とかもはや解説不能だ。

 んなこと言ってたら私のナレーションパートがまた干されそうなのでがんばるよ。


 棒の場合は、剣と違って棒全体が半物質なので、どこで攻撃しても相手にダメージ与えられる。棒の重さはというとモフコ先輩が、超軽いのから超重いのまで揃えちゃった。

 その中に、異常な軽さの棒があると気付いた男。それがイヤンさんだった。


「はじめ!」


 さーて始まりました。

 片手剣のジェロム選手、いきなり一直線に突き込みに行った――! でも敢え無く肩を突かれて押し戻された! ジェロムさん、肩をしたたかに打たれて渋い顔をしてる。


「有効 20点! 先攻、イヤン」


 肩外れてないか? 外れてなさそうだ。メグがびくっとして私に振り向いて確認する。


「今のは? 外れましたか?」

『問題ないようですよ』


イヤンさん、次のターンで棒をバトンみたいに左右に回し始めた! マジ危ないよ近づけないじゃないこれ。剣が弾かれるか絡めとられるよ! 規則正しく左右に回してたかと思いきや、「とわー」とか奇声と共に突きを繰り出す。肩の裏で回して、近づいてきたジェロムさんの背中を裏からパシンと叩く。ジェロムさんには、イヤンさんの攻撃は点にしか見えてないっぽい。


「有効 10点! 先攻、イヤン」

「有効 10点! 先攻、イヤン」


 審判がそんなイヤンを連呼しちゃてたら……卑猥だよね。違うか。名前なんだから仕方がない、ちなみに本名は「イヤン・ヤメーテ」って人だよ。滑ってるとか言わないでよ名前なんだから。このイヤンさん、点数は低いけどすげー地道にポイント稼いでいってる。というわけで、ジェロムさんは武器を持ちかえればいいんだけど、何か剣にこだわってる。え、今開始何分? 開始五分ぐらいで既に40点じゃない。


 あれ、イヤンさんすげー強いじゃん。

 何かちょっとカンフーみたいな棒の使い方になってるし、覚醒してんじゃん。


 でもジェロムさん、グランダの重装歩兵としてこのままでは終われない。そう思ったかどうかはいざ知らず、イヤンさんの棒をジェロムさん、片手で握って封じたぁああ! 今だ、ジェロムさんの攻撃が炸裂、するかと思いきや――!


「せいっ!」


 おーっとイヤン選手、棒引っ込めた。すると棒を握りこんでいたジェロム選手、コケたー!

 イヤンさん、完璧にジェロムさんのペースを引っ掻き回してるな。でも残念ながら転倒だけはポイント取られない。起き上がったジェロムさんを待ってたのは


「はいっ! ほいっ!」


 何と突きの連続攻撃! イヤンさん、突き込むのも早ければ、戻すのも速い。棒の軽さが生きてるよ。だからジェロムさんはその軽さ、速さ故に、躱す以外に片手剣では跳ね返せない。

 攻撃はジェロムさんの防具に入りまくってる。でもダメージが浅くて防具が反応しないとポイント入らないみたい。今度はジェロムさん、これ以上貰ってたまるかと突進してって棒を握ったー! そしてー! すかさず剣を棒の上から腕ごと回してイヤンさんの顔を刺そうとスライスしてきた! これに気付いたイヤンさん、ジェロムさんの脇下に棒を当て、引っかけるように真横に、


「ほわたぁ――!」


 振り抜いた――! けど、ジェロムさんはリンボーダンスのように体をのけぞって受け流された。イヤンさんが棒を手元に戻す間にジェロムさんはイヤンさんの背中に回り込む。背中から斜め十字に斬り、背中から力強く一蹴した。棒を上体全体で前方向に振った勢いと同じベクトル方向に蹴撃が上乗せされ、イヤンさんはバランスを崩して、棒ごと吹っ飛んでゆく。

 吹っ飛んだイヤンさんは、頭から場外に落ちる。思わず立ち上がる私とメグ。あ、でもさすがイヤンさんだ受け身上手い。ごろんと横に転がってダメージを殺し、腰には影響ないみたいだった。ところが


「あ!」


 あ? あっ、て何? どうしたんだろう、とか思ったら。うぎゃー両足くじいてる――!


「有効、200ポイント。先攻 ジェロム!」


 ポイント高っ! 場外落ちしたからか。

 立てるか、立てないと敗北だぞ! 頑張れイヤンさん!


「くっ……ううう」


 すげープルプルして……いけるか! 審判が判定すべく、睨みつけるように見てる。イヤンさんは全身に汗をかきながら。立ーてーなーい――!


「戦闘不能! 勝者ジェロム!」


 審判が容赦なく敗北を告げ、ジェロムさんに向けて判定旗をあげた。ジェロムさん、無表情で一礼しくるりと背を向け、舞台を降り控室に戻って行った。

 イヤンさんは途中まで圧してたのにたった一撃で場外に沈められてしまったよ。

 ジェロムさん、様子見してたっぽいな。まあでも彼のやり方は賢い。場外に投げるのがそんな高得点だとは知らなかったよ。


 私が彼の足に手を当てようとすると、慌てて道具袋をがさごそしてるメグと目があった。


「かみさま。私しっぷ、もってるんです!」

『ではそれを貼ってあげてください』


 とりあえず私が痛みを取って、あとはメグが手当をして湿布を貼り、上から包帯を巻いた。メグ、包帯もきれいに巻くようになったなー。勉強してるんだろうね、手当の方法とか。何か巻き方がプロい。


「はい、できましたよ!」


 メグが両足の手当てを終えると


「くそうっ! くそっ、くそっ」


 メグに礼を言うのも忘れて、何やら蹲る形で悔しがり始めたイヤンさん。この世の終わりみたいな顔をして、地面に拳を叩きつけてる。その形相の凄まじさたるや、尋常じゃない。


『……悔しいのですか?』


 A.I.でニートの彼が、勝負に負けるとそんなに悔しいもんなんだな。

 A.I.って結構勝ち負けにはあっさりしてて引きずったりしないのに、この人は珍しいなー。あれ、男泣きに泣いてるじゃない。


『勝負は勝負です、また来年があるではないですか』


 私が慰めようとしてたら


「グランディアで優勝したら、妻と子に戻ってきてもらうようにかみさまにお願いしたかったのに。来年まで待てというのでしょうかっ!!」


 イヤンさん、涙目でそんなこと言い出した。

 何言ってるんだろうこの人、まずあなた、戻ってきてもらうも何も家がないじゃない。自宅警備員なのに自宅がないし。でも


『えーと、あなたの奥さんに戻ってきてほしいのですね?』


 私は念のため確認する。そういう話だよな?


「まさに!」

『では、働けばいいと思いますよ』

「何で?」


 イヤンさん、きょとんとしてる。素だ。全くの素だよ。澄み切った瞳をしてるよ!


『仕事をやめたから、奥さんが出て行ったのではないですか?』

「そうなんですか?」


 こら! 神殿に駆け込んできてた奥さんを、私は知ってるよ。「主人が働かなくなってしまったんです……子供を食べさせていけません」って。働かなくなったのが奥さん家出した原因なんだから、働けば戻ってくるかもしれないよ、ということを延々とループしつつ噛み砕いて説明したんだけど。


『という訳ですから、働けばいいと思いますよ』

「うん? どうして? 仕事ないですよ俺、家もないし畑もないし、狩りは嫌だし釣りも下手、日中は修行したいし」


 ちょ、全然働く気ないじゃないのこの人! 

 誰よこのA.I.のプログラム作った現実世界のスタッフ。働きたくないけど、修行はしたいなんて……あ。あるじゃん、そんな彼にうってつけの仕事が。


『そういうことでしたら、ありますよ、仕事。きちんと働けば、テツは支払います』

「仕事? どこに?」

『私の神殿にです』


 というわけで、イヤンさんを私の神殿の掃除人兼神殿警備員として、日雇いで雇うことになった。神殿の掃除は私の日課だったけど、彼が失業してるなら彼にやってもらってもいい。やりたいなら、神殿前で修行もすればいい。


 でも……働いても奥さんが戻ってきてくれるかどうかは保証できないよ。

 戻って来るかもしれないし、来ないかもしれないよ。


 とはイヤンさんには言えなかった。だって喜んでスキップして退場していったから。



 続いての対戦は、女子。この試合が終わると、お弁当休憩の後、次が決勝となる。観客席を見ると、案の定誰か我慢できずに早弁してるし。そんなのはやっぱりモンジャ民だ。


【モンジャ集落 農家 ペプシ x ネスト国 毛皮職人 ピリカラ】 


 ペプシさんはモンジャで農業と小さな獣の養殖を営む、肝っ玉お母さん。ケンタのお母さんだよ。ケンタとペプシって……何かファーストフードのセット的なネーミングだよね。選んだ武器は、棍棒を一本。てかモフコ先輩その形どう見ても……ペプシさんの武器はバットです。バット全体が半物質とはいえ、こんなのでおばあちゃん殴って大丈夫か?


 そしてネストのピリカラさんは、狩りの達人のおばあちゃんで、毛皮職人。この人は凄いよ、ってネストの人が口をそろえて言う。なにせ、ネストの森が毒に冒されてた頃に、崖の上や木の上から動物を罠や奇襲でしとめ、森に降り皮を剥いで加工して売ってきたっておばあちゃんだ。しかも時々毒にやられたりしながら、何十年も専業で! 

 データによると、ピリカラさんは63歳ぐらい。細身で温和そうなおばあちゃんだけど、ただのおばあちゃんじゃない。選んだ武器は、手で握れる鎌を二本。普段使ってるのかな。


「はじめ!」


 全く勝敗の前予想がたたないまま、始まりました。女子の試合! うーん……両方とも、女子か? いえ……女子、女子だよ! ピチピチの女子だよ!

 とにかくおばちゃんとおばあちゃんのマッチだ、マジ迫力ある。このグランディア、出場してるのは若い子ばかりじゃない。特に、剣術や弓術など、直接体力勝負ではないような競技にはおばちゃんおじちゃん、じいちゃんばあちゃんまで参加してた。大半は本選までにふるい落とされたけどね。


 来年はもっと平和にゲートボール競技とか、シルバー向けの競技でも作るべきかもしれない。


 それはともかく。さて、どう戦うのか、最早全然想像つかない。

 じりじりとピリカラさんに詰め寄る、肝っ玉母ちゃんペプシさん。


 ペプシさんから弧を描くように遠ざかり、警戒して距離をとるピリカラさん。ピリカラさん、先手必勝とばかりペプシさんの懐に飛び込んできた。ペプシさんがバットをフルスイングして反応すると、ピリカラさんは下をくぐりぬけ、三日月状の鎌で鋭くペプシさんの太腿をひっかけるように切り上げた。


「有効 20点! 先攻、ピリカラ」


 これに勝機を見出したピリカラさんの、一方的展開が始まった。ペプシさんがバットを振ろうとすれば、それより早くピリカラさんがペプシさんの手元を切りつけ、有効が取られ得点が入り、試合が中断される。ペプシさんの攻撃は多分当たれば凄い威力で、事実彼女はそれで勝ちあがってきたんだけど、ピリカラさんにとっては動きが遅いんだ。ピリカラさんの賢いところは、ペプシさんのバットの動きをよく見てて、振る直前に手首を潰してるところだ。そして極めつけは、少しの防御の隙間を見つけて


 手首じゃなく、ペプシさんは首をばっさり刈られた。


「有効 30点! 勝者 ピリカラ!」


 ペプシさん、時間いっぱい。ストレート負け、かと思われた。ペプシさんがバットを振ろうとした瞬間にピリカラさんが手首を刈ろうとしたとき、ペプシさんは片手をバットから離し、ピリカラさんの手首をひっつかんだ。


 そしてペプシさんはピリカラさんの手首を捩じり上げ、足を浮かせぶらーんと吊り下げる。ピリカラさんは小さなおばあちゃんだ。簡単に足が浮いてしまう。その隙に、ペプシさんは脇腹にバットでクリティカルな一撃をお見舞いした。バットはピリカラさんの身体を横断し、防具だけがダメージを記録している。攻撃の当たった側が、半身だけが真っ赤になってた。

 でも、それとほぼ同時にピリカラさんの鎌がペプシさんの手首に刺さってる。さすがピリカラさん、ただではやられない。


「有効、ペプシ 40点、ピリカラ 20点。先攻 ペプシ!」


 同時得点きたー!


「はじめ!」


 先攻のペプシさん、残り時間を惜しんで再開直後突進していった。両手で掴んでいたバットの右手を離し、鎌を振り上げたピリカラさんの右手首をその右手で取り、身体を返してピリカラさんの背後に覆いかぶさるように、ピリカラさんの頭の上に腕をよぎらせ、バットを投げだし左手首も背後から左手で掴んだ。後で白さんに聞いたら、これって合気道の「両手取り」って技なんだって。

 ピリカラさんは機敏だけど軽量で、非力なおばあちゃん。

 両手首を掴まれたまま、喉にバックハンドブローをもらうと、たまらずびたーんと舞台の上に倒れ込んだ。ペプシさん、技が決まったと思って「よっし!」 とか言ってる。 

 でもペプシさん、まずいよそれ……バット投げ出しちゃったら……。


「ペプシ、反則! 勝者、ピリカラ!」

「え!?」


 結果は、ストレートに反則負けになりました。

 武器を完全に手放したまま攻撃してはならない、というルールに反してる。ペプシさん、夢中になって忘れてたんだね。これにてモンジャ勢、敢え無く全員敗退。


 勝ち進んだのは、ピリカラおばあちゃん!


「モンジャ、負けちゃいましたね」


 メグがひとしきりぽかんとした後、しみじみと呟いた。

 私はメグの頭にそっと手を置いて、何とコメントすればよいのやら困る。


『そういうところも、モンジャらしくていいと思いますよ』

「それもそうですね!」


 メグはにぱっと笑って振り向いた。


 というわけで……。


 男子決勝 【ネスト国 御家人 クワトロ x グランダ国 重装歩兵部隊 中隊長 ジェロム】 

 女子決勝 【グランダ国 女官 バルバラ x ネスト国 毛皮職人 ピリカラ】



 決勝の対戦相手が決まった。

 いよいよ、第一回グランディア、決勝戦へ。


 決勝は、お弁当休憩のあとで。

 前へ次へ 目次  更新