怒涛の連戦
シトラス達の対戦相手、オレンジチームのメンバーは同じく三人。剣士、魔法使い、格闘家で、男が二人女が一人だった。女は格闘家。ロックの矢をひょいひょいと避けている。そのまま迫って来た。蹴りでロックを倒す。ジェニファーが、魔法使いに向かってサンダーボムを放った。シールドで防がれ、ファイヤーショットを撃たれる。が、ジェニファーも負けてはいない。すぐさまアイシクルレインを放ち、ファイヤーショットをかき消した。
シトラスは剣士といい勝負をしている。ロックはサッと立ち上がり女のボディにパンチをした。矢で攻撃してくると踏んでいた女はガードできず、クッと怯んだ。
そこに飛天狩射を受けてしまう。
女は吹き飛び、手すりに当たった。
気絶したのか動かない。
勿論、人間相手だから威力はセーブしている。
戦えなくすればいいから。
ジェニファーのアイシクルレインを受けた魔法使い。今度はシトラスに狙いを定めた。シトラスは剣士を疾風で退けると、バーニングバードを避けて直進した。
驚いた顔の魔法使いに十字斬を放つ。
魔法使いは仰向けになった。
「おおっと、これは凄い。緑チームがオレンジチームを圧倒しています! オレンジチームはあと一人になったあ。一体緑チームのこの子達は何者だあ」
シトラス達の対戦を実況する人も大変だ。
観客に分かりやすく伝えないといけないから、目を離す事はできない。しかし、この人、話が上手い。観客も盛り上がっている。
同時に行っているもう一つの試合も凄いんだろうなぁ。叫び声と気合いが響いてくるから。
「たあ〜っ!」
残った剣士が向かって来た。
シトラスが剣で受け止める。
ロックが飛天狩射で狙ったが、駄目だった。
剣士はシトラスから離れ、矢は間をすり抜ける。
剣士が余裕の笑み。しかし、そんな暇はなかった。
ジェニファーのファイヤーショット。男の肩に当たる。
最後はシトラス。
「五月雨!」
剣士は白眼を剥いた。
実況が、シトラス達の勝利を告げている。
舞台がググググッと下がり、元の位置に戻った。
オレンジチームは担架で医務室に。
ちょっとやり過ぎたかな。
白チームと赤チームの決着もついた。
なんと勝者は赤チーム!
あの男性のいるチームだ。
男性は舞台を降り、真っ直ぐシトラス達の方に向かって来た。
女性も一緒だ。
「何か運が向いてきたようだ。奇跡の三回戦進出だよ。君達も。お互いに全力を尽くそう」
「はい!」
握手を交わす。
女性が話しかけた。
「ごめんなさいね。初めての事で、この人興奮してるの。でも、わたしも嬉しいわ。夢だったんですもの」
「俺達も初めてです。でも……」
「分かってるわ。譲れない物があるのは。ベストを尽くしましょう」
「はい!」
あまり休む暇もなく三回戦へ。
これから疲れが出て来る時。
いかに体力を保てるかが、勝利の鍵だ。
この試合は、地獄のトーナメントとも言われる。
それでも、チャンピオンと戦いたい為、さまざまな人が挑戦しているのだ。
「赤チームと緑チーム、舞台へ!」
男性は戦士、女性は魔法使いのコンビだ。
鉄球と杖を手にする。
「始め!」
グルン。
鎖のついた鉄球を振り回す。
なかなかのパワーだ。
ロックはジャンプして避けた。
空中で弓を構える。
「乱天狩射!」
矢の雨の中、シトラスが走る。
男性は、鎖を引っ張った。
「十字斬!」
「ムッ」
シトラスの剣技が当たった……、のだが男性の鎖も、シトラスに絡みついていた。
もがくけどびくともしない。
男性は腹を押さえていた手を離し、両手で鎖を持った。
「無駄だよ少年。可哀想だけど」
腕に力を入れ、グルングルンと、空中で鎖を振り回す。
シトラスは、目が回ってきた。
舞台へと叩き落とされる。
ダンッ。
衝撃で、シトラスの体は跳ねた。
「シトラスっ!」
ジェニファーとロックの叫び。
彼は意識がある。
力を入れて起き上がろうとする。が、立てない。
ジェニファーが近づき回復魔法をかけようとする。
「やらせないわ!」
相手の魔法使いだ。
ジェニファーはファイヤーショットを受ける。
ロックが、その女性に向かって炎天狩射を放った。
「キャッ!」
女性は倒れる。
服は少し焼けた程度。
ロックはそのまま、戦士の男性に弓を向けながら言う。
「ジェニファー、シトラス、大丈夫か?」
「う、うん」
ジェニファーは大したことはない。
彼女はすぐ立ち上がり、急いでシトラスにキュアリーをかけた。
「サンキュー、ジェニファー」
「うん」
ジェニファーに手を引いてもらう。
男性は鉄球を構えた状態で見ていた。
女性も起き上がろうとしている。
「立ったね。少年」
「ええ。行きますよ」
鉄球が飛んで来る。
シトラス、ジェニファー、ロックはサッと避けて走った。
「ウイングナイフ!」
無数の小さな風が男性を包み、攻撃する。
女性が呪文を唱えようとしたが、それより早くロックの矢が飛んで来た。
ビュッ。
服を引っ掛け、舞台に刺さる。
女性は動けない。
一方、ジェニファーの魔法を何とか耐えた男性だが、シトラスの剣を受けてしまう。
「飛翔斬!」
「ムウッ」
膝をつく。
顔を上げると、喉元にシトラスの剣。
隣の女性も焦る。
男性はフッと笑った。
「負けたよ。君達の勝ちだ」
それを聞いた審判。
シトラス達緑チームの四回戦進出を告げた。
ロックが矢を抜き、ようやく女性が動けるようになった。
男性が握手を求める。
「君達は強かったよ。今まで一回戦も突破できなかった俺達がここまで来たんだ。悔いはないよ。頑張ってチャンピオンの所まで行ってくれ。応援してるよ」
「はい!ありがとうございます!」
その光景に観客席からは称賛の拍手が送られた。
闘技場の人が言う。
「では、続けて四回戦と言いたい所なのですが、緑チームの人達が疲れているようなので、ここで10分休憩と致します」
良かった。
本当は休みたいと思っていたんだ。
トイレも行きたいし。
控え室の通路に、選手用のお手洗いがあったはず。
ジェニファーは、そそくさと向かった。
シトラスとロックも。
まだ時間が残っていたので、部屋に戻って水分補給もして来た。
これだけで疲れが取れる訳じゃないけど、少しはましだろう。
いよいよ四回戦。
この戦いに勝てば、チャンピオンが待っている。
闘技場最強のモンスターの一匹、だっけ。
通路を通り、舞台へと向かう。
歓声と声援が聞こえた。